ご自身のこと

私の生きづらさはどこからくるのか?不安定さの原因は親との「信頼関係」の欠如

・随分前から、自分は他の人とは違うのではないかと感じている
・どこかうまくやれていない、漠然とした不安がある
・自分はここにいていいのかわからなくなる
・どこまで頑張ればいいのか、もう疲れてしまった・・・

まわりと自分との間にどこか違和感があり「生きづらさ」を感じている。この違和感を解決するために、本やネットで調べて、その時は納得するけれど、しばらくするとまた生きづらさが出てくる。ずっと前から不安が根底にある。
そんな思いを抱えていませんか?
私は、10年以上子ども家庭支援センターに勤めてきました。そのため、相談のきっかけは子育ての事でしたが、話を聞くうちにその方の抱える「生きづらさ」をみるようになりました。「生きづらさ」を抱えたままだと、仕事、子育て、夫婦関係がうまくいきません。表面上はうまくやっていたとしても、そこに安心はなく、いつも焦燥感があるでしょう。
この記事では、生きづらさを抱えた方が少しでもご自身を理解する助けになるよう、その原因について解説しています。

「生きづらさを感じる人」の生き方の特徴

「生きづらい」という感覚は、社会や人間関係を通じて語られる言葉です。人との関係や社会の中で、自分はどういった存在であるのか。「私はこういう人間です」と説明ができて、他者からもそれを受け入れてもらうことができれば、「こういう人間」の内容がポジティブであってもネガティブであっても、「生きづらさ」を感じることはありません。
例えば、生まれつき片腕がない方がいるとします。その方は、衣食住をはじめとする普段の生活で片腕しか使えないため、様々な場面で「不便」を感じるでしょう。両腕を使える方と比べて、満足にできないことも多いかもしれません。しかし、できないことを他者に伝えることができ、まわりからも理解を得られれば、それは「生きづらさ」にはならないのです。
一方、ここで説明する「生きづらさ」を感じている人は、自分が感じている感覚をうまく説明できなかったり、自分の感じている感覚がまわりとは違うのではないかという違和感を持っています。まわりの人と自分とは何か違うけれど、その違いがよくわからない、他者からも理解されない、それが「生きづらい」という感覚となっていきます。
では、「生きづらさ」を抱える方がどういう生き方をしているのか、その特徴をみていきましょう。

①自己主張できない

自己主張とは、自分の意見や欲求を他者に伝えることです。「生きづらさ」を抱える人は、これができません。友達とランチに行くことになったとき、「私は○○が食べたいけど、あなたはどう?」と言えません。また、嫌なことをされたり、苦手なことを頼まれたりしたときに、断ることも苦手です。我慢が強く、過酷な状況でも逃げることができず耐えてしまいます。

②他者に合わせている

自己主張できないこととも共通しますが、他者に合わせるという特徴もあります。人の表情をよく見ており、相手が何を求めているのかを察知することが得意です。自分の話をするよりも、相手の話を聞いている時間が長く、頼られる方も多いです。また、自分の意見が通ってしまった際は、相手が不快に思っているのではないかと不安になることもあります。
中には、人が怖い方もいるでしょう。人を信頼できず怖くなり、自分が他者に受け入れられている感覚がないのです。

③慢性的な緊張と不安

「ちゃんとやらなければいけない」という気持ちが強く、いつも緊張しています。他者に嫌われないように、期待に応えられるように気を張っています。「自分はこれでいいのだろうか、何かうまくいかないのではないか」という漠然とした不安も大きいです。他者に褒められたとき、一時嬉しい気持ちがあるかもしれませんが、その気持ちは長く続きません。

④安心や幸せが怖い

困難なことに身構える姿勢が強く、安心や幸せを回避しがちです。うまくいくことや幸福になることへの期待を禁止しており、幸せになりそうになると、その状況から逃げてしまいます。例えば、自分のことを大切にしてくれるパートナーに出会った際、普通は嬉しく感じ、なるべく関係を続けていく努力をしますが、「生きづらさ」を感じている方は、パートナーに大切にされていることに居心地の悪さと不安を感じます。自分は相手にとって迷惑ではないかと感じ、自ら離れる選択をすることもあります。幸せに対する恐怖があるのです。

⑤どこか人と違う「違和感」

自分は社会に溶け込めていないのではないか、どこか浮いている気がするという感覚を持っています。「普通」のふりをしているけれど、どこか違和感がある、もしくは「普通」がわからないという方もいるでしょう。自分の人生とどこか距離があり、他者が感じているような喜怒哀楽とは違う空虚感や不全感があります。「離人症」を経験された方もいるかもしれません。

生きづらさの原因は幼少期に親との「信頼関係」を十分に築けなかったから

人が生まれてきて、最初に信頼関係(愛着関係)を築く相手は親、特に母親です。子が母親を求め、母親がそれに応じること、その繰り返しによって信頼関係は成り立っていきます。
また、子どもが成長して社会(保育園、幼稚園、学校、職場など)に出るとき、その子は母親との信頼関係を基盤にして、他者(友人、先生、その他の大人)との関係を築いていきます。子どもが小さいときに、母親が十分に子どもの求めに応じていれば、子どもは「この世界(社会)は自分を受け入れてくれる、安心していい場所なんだ」と認識し、母親以外の他者にも受け入れられると信じて関係を作っていきます。たとえうまくいかないことがあっても、試行錯誤して乗り越える力も持ち合わせています。

一方で、母親に十分に受け入れられなかった子どもは、母親との信頼関係が希薄です。子どもが母親に求めても、十分に応じてもらえない経験を繰り返すと、子どもの求める力(自己主張)が弱くなっていきます。また、自分は他者に受け入れられているという感覚も薄いため、緊張や不安が強くなります。
多くの他者が自己主張し、自慢や愚痴を話す中で、母親に受け入れてもらえなかった子どもは、大人になってもそれができません。ずっと自分の感情を抑え、我慢することで生き延びてきた方は、そういう生き方を知らない他者との間に「違和感」を感じるのです。

子どもの求めに応じられない母親の特徴

母親が子どもの求めに応じられなかった原因は、母親に相当の負荷がかかる環境であったか、または子どもの求めを適切に察知し、応じる力がなかったかのどちらかです。相当の負荷がかかる環境というのは、例えば激しい嫁姑問題や介護、夫からの暴力、子どもの障害などです。子どもの求めに応じる力がないというのは、母親の母性が弱く、子どもを思う気持ちよりも、自分のことで精いっぱいで、「共感能力」に未熟な部分があるということです。
どちらの場合も、子どもは母親に応じてもらえないことで自分の気持ちを我慢し、逆に母親を支えようとします。母親の愚痴を聞いたり、機嫌を取ったりする子も多いです。

母親に気持ちをわかってもらえなかった

子どもは、母親に気持ちをわかってもらえないと、わかってもらうことを諦め、期待しないようにします。気持ちをわかってもらうということは、大切にされることとイコールです。つまり、わかってもらえないということは、「自分は大切にされる存在ではない」というこ自己認識につながるのです。そんな自分が自己主張してはいけない、他者に何かを求めてはいけない、幸せや安心を期待してはいけない、そういった思いから、自ら幸せになることを遠ざけ、安心から逃げる行為につながるのです。

母親に褒められたことがない

人は、褒められたり認められたりすることで、「自分はこれでいいんだ」と安心することができます。また、「ここまでやればOK」という基準も自分の中に獲得することができます。しかし、褒められた経験のない子どもは、どこまでやればOKなのかを知らないまま成長します。母親から認められる経験がないと、他者から「よくできているね」と言われても、素直にそれを受け入れることができません。「自分はこれでいいのだろうか」という不安が強く、どこまでやっても安心が伴わないのです。

親からの暴言・暴力があった

親からの暴言・暴力があると、子どもの緊張はさらに強まります。これは、母親からの暴言・暴力があった場合と、父親からの暴言・暴力があり、母親が子どもを守らなかった場合の両方です。親によって、厳しい規則を設け、子どもがそれを守らないと叩くということもありますが、そうではなく親の機嫌によって叩かれる、怒鳴られるという場合は、決まりを守っていても安全が脅かされるため、ずっと緊張していなければなりません。親の顔色をうかがい、親に指示されたことをやり、それでも怒鳴られる。機嫌の良いときだけは、優しかったかもしれません。そんな環境を生きてきた子どもは、自分の身を守るために必死だったでしょう。

大人になってからの生きづらさ

上記では、「生きづらさ」を感じる原因が、子どもの頃の親との信頼関係の希薄さにあると説明しました。では、そんな中で育った子どもが大人になったとき、どんな苦労を経験するのか、仕事と子育てについて取り上げてみます。

生きづらさと仕事

生きづらさを抱える方は、緊張や不安が強く、それが仕事の場面にも影響します。基本的に仕事は真面目によくこなしている場合が多いですが、本人にその自覚はありません。指示された仕事を淡々とこなし、任されることが多くなっていきますが、どこまでやればOKという基準がないため断ることができず、際限なく請け負ってしまいます。
また、「ちゃんとやらなければ」という気持ちが強く、他者を頼ることも苦手です。わからないことがあるときに、上司や同僚に確認できない方もいます。
仕事はできますが、できたことへの達成感や安心感がないため、疲れだけが溜まっていきます。ひどい場合には、慢性的な疲労やうつ病で倒れてしまうこともあるでしょう。

生きづらさと子育て

生きづらさを抱える方は、子育ても苦しいことが多いです。特に一人目の子育ては、初めてのことばかりで、緊張と不安の連続です。一般的には、親や親族を頼りながら乗り越えていくものですが、親との関係が希薄だと頼ることができず、孤立した子育てになりがちです。
また、自分が親から十分に応じてもらった経験がないため、子どもにもどう接したらよいかわからないという方もいます。子どもが無邪気に甘えてくる様子を見て、自分の小さいころからの我慢が刺激され、苦しくなることもあります。子どもの甘えを受け入れられず、きつく当たってしまうこともあるかもしれません。
本来子育ては、大変なことと喜びとの両方があるものですが、生きづらさを抱えた方の子育ては、喜びがとても小さく、我慢と疲れ、焦りと不安に追い込まれていきます。

解決の糸口は「自分を正しく理解すること」

生きづらさを抱える方は、これまでずっと苦しく、辛い思いをされてきたことでしょう。生きづらさを解消するために、本やネットの情報に頼ったり、メンタルクリニックやカウンセリングに通われたこともあるかもしれません。

私が考える解決の糸口は、自分の生きづらさとその原因を正しく理解することです。生きづらさの原因がわかると、それまでの緊張がゆるみます。自分が今までどれだけ我慢して頑張ってきたのか、それを知ることで、自分に対してOKを出せるようになるのです。

そのためには、自分一人で解決しようとするのではなく、適切な専門家を頼ってください。職場に産業医や産業カウンセラーがいる方は、一度相談してもよいでしょう。また、子育て中の方は、地域の子育て相談の窓口や保健センターを頼るのもひとつです。
私のカウンセリングルームでも、ご相談いただけます。
自分の生きづらさはどこからくるのか、自分の「生き方」に気づくと、そこから離れることができます。ゆっくり時間をかけて、解決していきましょう。

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